動態デザイン研究室特別児童扶養手当の所得制限撤廃に向けた法案

特別児童手当等の

所得制限撤廃に向けた

法案の解説

  1. 法と所得制限の体系

今回、取り上げる「所得制限」は、「特別児童扶養手当」「障害児福祉手当」「特別障害者手当」「経過的福祉手当」という4つの手当です。このうち「特別児童扶養手当」と、ほかの3つの手当では、つくられた経緯が違うため、所得をどのように見るか(どんな人の収入を基準にするか)の仕組みも少し違います。

ただし、これらはすべて同じ法律「特別児童扶養手当等の支給に関する法律」と、その実際の運用ルールを決めた政令「特別児童扶養手当等の支給に関する法律施行令」によって決められています。以下の図にある通り、法律で「誰の所得を計算対象にするか」を決め、施行令で「所得制限の金額はいくらにするか」「どう計算するか」などを決めている、という関係になっています。

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  1. 2010年の合意文書

2010年1月7日、国(厚生労働省)と障害のある人たちが、長く続いた裁判の中で話し合い、「基本合意文書」を取り交わしました。

2006年4月に始まった障害者自立支援法では、「応益負担」という仕組みが導入され、サービスを多く使うほどお金を払う制度になっていました。家族の収入をもとに負担額が決められたため、重い障害のある人や収入の少ない世帯がサービスを使いにくくなり、全国で「応益負担をやめてほしい」という運動が広がりました。政府が方針を変えなかったため、最終的に人々は国を相手に裁判(障害者自立支援法違憲訴訟)を起こしました。

この訴訟では、生活保護に近い人でも自己負担を求められたことや、家族の所得を合算して判定する仕組みのせいで、本人が独立して暮らしていても負担が減らないことが問題になりました。こうした点が「生きる権利(生存権)」や「平等に扱われる権利」に反すると主張されたのです。

その結果、2010年に結ばれた基本合意文書の中で、国は「応益負担を廃止し、新しい制度をつくる」と約束しました。文書には、所得制限のあり方についても次のように書かれています。

「収入認定は、配偶者を含む家族の収入を除外し、障害児者本人だけで認定すること。」

(厚生労働省『基本合意文書』(平成22年1月7日)第3条第3号)

つまり、サービスを受ける際には家族の収入ではなく、障害のある本人の収入だけで判断するという考え方です。これは、家族に頼らず本人の自立を尊重するという重要な考え方を示しています。

この合意を受けて2013年に「障害者総合支援法」が施行され、古い自立支援法は廃止されました。ただし、所得制限そのものは今も一部に残っています。なお、この基本合意は放課後等デイサービスをはじめとしたさまざまな障害福祉サービスを対象にしたものであり、今回の法律に直接関係するものではありませんが、その考え方は今後の制度設計において重視すべき視点といえます。

  1. 法律改正案

法律の改正案を考える場合、大きく2つの問題があります。ひとつは「どこまで細かく改正文を作るか」、もうひとつは「障がいのある本人の所得制限をどうするか」です。前者は作業の問題ですが、後者は、2010年の国との基本合意をふまえて、「社会全体がどう考えるか」という価値の問題になります。

私の考えでは、この手当の当初目的が「介護をする家族に対する激励を目的とした特別な手当」であることを考えると、障がいのある本人の所得制限はすぐに無くすべきではないと思います。ただ、いまの所得制限の基準は1998年から変わっておらず、今の物価や生活費とかけ離れています。そのため、制度を残すにしても、金額を見直すことは必要だと思います。

これを踏まえた上での法案ですが、いくつ考え方がありますが、これを細かく説明すると眠くなること必至なので、簡単に箇条書きで整理してみました。詳しく知りたい方は一番下のPDF資料をご覧ください。


  1. 法律を変えないパターン

施行令第2条のみを削除


  1. 家族の所得制限を復活できないようにするパターン

法律第6〜8条、21条を削除し、施行令第2条を削除


  1. 家族の所得制限に関連する項目を完全に削除するパターン

細かい精査が必要なので、一概に言いきれない


  1. 障がい者本人の所得制限も削除するパターン

法律第6〜10条、20〜23条を削除し、施行令第2〜5条、7〜8条、11〜12条を削除


なお、2025年12月5日に立憲民主党が提出した法案においては、以下のように条文が構成されています。

  • 特別児童扶養手当の所得制限にまつわる条文(6〜10条/9条は災害特例・10条は「政令で定める」の条文)をまるごと削除。

  • 3手当に対して影響を与えていた条文(20〜23条/22条は災害特例・23条は「政令で定める」の条文)をまるごと削除。

  • 特別障害者手当の条文(26条)に20〜23条の条文を追加。

  • 経過的福祉手当の条文(附則97条)は特別障害者手当の条文を準用するよう変更。

立憲民主党提出法案(2025年12月5日)
https://cdp-japan.jp/files/download/2025/WQLk/GaqH/lQDM/2025WQLkGaqHlQDMEle6WOx7.pdf

PDF文書

(官僚向け想定の資料です)