動態デザイン研究室特別児童扶養手当の所得制限撤廃に向けた法案

特別児童手当等の法体系と

撤廃法案の解説

  1. 法の概要



手当名称

  • 特別児童扶養手当
    中度〜重度障害児/1〜2級)

  • 障害児福祉手当
    重度障害に対する加給

  • 特別障害者手当
    重度障害に対する加給

  • 経過的福祉手当
    (制度再編時の救済措置/新規認定なし

  1. 法と所得制限の体系

特別児童扶養手当と、ほかの3つの手当では創設経緯が違うため、所得をどのように見るかの仕組みも少し違います。以下の図にある通り、法律で「誰の所得を計算対象にするか」を決め、施行令で「所得制限の金額はいくらにするか」「どう計算するか」などを決めている、という関係になっています。

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  1. 歴史的変遷

① 障害基礎年金の創設

1941年に制定された労働者年金保険法を元に1959年に国民年金法が制定され、その中に「20歳前に初診日のある人や、制度の発足前に初珍日のある人を対象とした無拠出制の障害年金制度」として、障害福祉年金が創設された。その後、1985年の年金法改正時に障害福祉年金から障害基礎年金に名称および制度改定された。
https://www.mhlw.go.jp/stf/nenkin_shikumi_012.html

② 重度精神薄弱児扶養手当の創設

1964年に「重度の精神障害者向け入所施設の不足」を背景に、在宅者に対する特別介護手当として重度精神薄弱児扶養手当を創設した。この際、所得保障か?特別手当か?については未決のままであった。その後、1966年の制度改定(重度身体障害者を対象者として拡充)時に特別児童扶養手当法と改め、手当名も特別児童手当と改められた。

https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta9420&dataType=1

③ 特別福祉手当の創設

特別児童扶養手当法は設立当初より「20歳以上であっても手当が必要である」という理念を掲げており、1974年に「年齢を問わない重度障害者への加給制度」として特別福祉手当を創設した。この際、法律の名称も改め、現在の法律名となった。

④ 制度再編

1986年に「年齢によって判定基準や必要となる金額は異なってくるであろう」という議論にもとづき、特別福祉手当を再編し、20歳未満を対象とした「障害児福祉手当」と20歳以上を対象とした「特別障害者手当」に分割した。この際、認定基準が見直され、ボーダー領域にある者は認定から外れる事態が生じた。そのため、救済措置として「経過的福祉手当」が創設された。経過的福祉手当は原則として障害児福祉手当の条文を準用している。

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こうした歴史的変遷を踏まえると、法体系・制度としては「1+3手当」の構造となっているため、障害児福祉手当のみを所得制限の撤廃対象に含めることは、制度の体系と矛盾する点に注意が必要です。

  1. 2010年の合意文書

2006年4月に始まった障害者自立支援法では、「応益負担」という仕組みが導入され、サービスを多く使うほどお金を払う制度になっていました。家族の収入をもとに負担額が決められたため、重い障害のある人や収入の少ない世帯がサービスを使いにくくなり、全国で「応益負担をやめてほしい」という運動が広がりました。政府が方針を変えなかったため、最終的に人々は国を相手に裁判(障害者自立支援法違憲訴訟)を起こしました。

この訴訟では、生活保護に近い人でも自己負担を求められたことや、家族の所得を合算して判定する仕組みのせいで、本人が独立して暮らしていても負担が減らないことが問題になり、こうした点が生存権や平等に扱われる権利に反すると主張されました。

この結果、2010年1月7日、国との間で「基本合意文書」が取り交わされました。これにもとづき、障害者自立支援法は2013年に障害者総合支援法へと改正されました。この文書には、所得制限のあり方についても次のように書かれています。

「収入認定は、配偶者を含む家族の収入を除外し、障害児者本人だけで認定すること。」

(厚生労働省『基本合意文書』(平成22年1月7日)第3条第3号)

この基本合意はにもとづき、障害福祉サービスは原則「応能負担」に変更されています。なお、本合意は放課後等デイサービスをはじめとしたさまざまな障害福祉サービスを対象にしたものであり、今回の法律に直接関係するものではありませんが、その考え方は今後の制度設計において重視すべき視点といえます。

  1. 法律改正案

法律の改正案を考える場合、大きく2つの問題があります。ひとつは「どこまで細かく改正文を作るか」、もうひとつは「障がいのある本人の所得制限をどうするか」です。前者は作業の問題ですが、後者は、2010年の国との基本合意をふまえて、「社会全体がどう考えるか」という価値の問題になります。

私の考えでは、この手当の当初目的が「介護をする家族に対する激励を目的とした特別な手当」であることを考えると、障がいのある本人の所得制限はすぐに無くすべきではないと思います。ただ、いまの所得制限の基準は1998年から変わっておらず、今の物価や生活費とかけ離れています。そのため、制度を残すにしても、金額を見直すことは必要だと思います。

これを踏まえた上での法案ですが、いくつ考え方がありますが、これを細かく説明すると眠くなること必至なので、簡単に箇条書きで整理してみました。詳しく知りたい方は一番下のPDF資料をご覧ください。


  1. 法律を変えないパターン

施行令第2条のみを削除

施⾏令第2条を削除することで、「参照すべき所得制限の⾦額」が失われ、実質的に所得制限が撤廃される。ただし、法律上の枠組み(第6〜8条等)は残存するため、将来的に再び所得制限を復活させることが可能となる点が課題である。


  1. 家族の所得制限を復活できないようにするパターン

法律第6〜8条、21条を削除し、施行令第2条を削除

上記に加え、法律の第6〜8条および第21条を削除することで、介護家族に関する所得制限が完全に廃⽌される。


  1. 家族の所得制限に関連する項目を完全に削除するパターン

細かい精査が必要なので、一概に言いきれない

この場合、条⽂間の連動関係が複雑である。たとえば第9 条は「罹災時には所得制限を適⽤しない」と規定しており、同条は障害者本⼈の所得計算にも適⽤されるため、単純に削除することはできない。慎重な条⽂精査が不可⽋であるため、ここでは具体的に⾔及しない。


  1. 障がい者本人の所得制限も削除するパターン

法律第6〜10条、20〜23条を削除し、施行令第2〜5条、7〜8条、11〜12条を削除

この場合は、法律上「所得制限」として規定されている条⽂を包括的に削除する。具体的には、法律の第6〜10条および第20〜23条、さらに施⾏令の第2〜5条、第7〜8条、第11〜12条を削除することにより、本⼈および介護家族の双⽅に対する所得制限を制度上廃⽌できる。


  1. 立憲民主党提出法案

2025年12月5日に立憲民主党が提出した法案においては、以下のように条文が構成されています。

  • 特別児童扶養手当の所得制限にまつわる条文(6〜10条/9条は災害特例・10条は「政令で定める」の条文)をまるごと削除。

  • 3手当に対して影響を与えていた条文(20〜23条/22条は災害特例・23条は「政令で定める」の条文)をまるごと削除。

  • 特別障害者手当の条文(26条)に20〜23条の条文を追加。

  • 経過的福祉手当の条文(附則97条)は特別障害者手当の条文を準用するよう変更。

立憲民主党提出法案(2025年12月5日)
https://cdp-japan.jp/files/download/2025/WQLk/GaqH/lQDM/2025WQLkGaqHlQDMEle6WOx7.pdf