動態デザイン研究室100のくらし 一覧
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私には8歳年上の兄がいます。兄は最重度知的障害を伴う自閉症で、手帳1級に相当する状態です。発語はなく、食事・入浴・排泄まで介護が必要です。成人男性の体格と力を持った“赤ちゃん”が家庭の中心にいると想像していただければ、状況の深刻さが伝わると思います。

私の一日は、兄の乱暴な足音と、母がその行動を止めようと怒鳴る声で始まります。戸建ての二階でそれぞれ寝室があるにもかかわらず、兄は起きている間、5分おきに階段を昇り降りします。その足音は大きく、わざと踏み鳴らすように歩き回ります。大抵は母の気を引きたいからで、発語の代わりにとても大きな奇声や騒音、悪戯など、何でもやります。騒がしさにつられて私も一階へ向かうと、階段で何かを踏みます。兄の尿です。一人では排泄もままならないので、廊下や階段にぽたぽたと尿がこぼれていることがしょっちゅうあります。

床を洗うために風呂場に向かうと、脱兄が立ち入って悪戯をしないように鍵がかけられた脱衣所を開けることになります。一階で鍵のかかる部屋は脱衣所しかないため、我が家では触られて困るものは全て脱衣所に押し込んであります。たとえば、分別した家庭ゴミ。兄はプラゴミが大好きで、プラスチックの外装欲しさに惣菜やペットボトルなどの中身を捨てて持ち去ってしまうということがよくあります。先日はパックに入ったお寿司を食べているときに目をつけられ、トレイごとひっくり返されて醤油で服を汚されました。それゆえに、我が家は冷蔵庫も勝手に荒らされないよう鍵が取り付けられています。

兄はとりわけ飲み物に対して強い執着があり、十分な水分を与えても際限なく飲み物を求めます。当然、冷蔵庫に入っている調味料が飲み物ではないと理解できませんので、家族が目を離した隙に飲もうとするのです。この間は白だしを飲まれ、飲めないものだと分かった瞬間、今度はボトル欲しさに中身を捨てられました。なので鍵のかかった冷蔵庫の中に、さらに中身の見えない袋へ調味料をしまって、目の届きにくい上段の奥に隠したりしています。それだけではありません。水道の水すら我が家では常に注視していなければならない対象です。兄は「蛇口をしめる」という発想がそもそもないので、水を出したら出しっぱなしにしてしまいます。一晩中水が流れていたなんてこともあり、蛇口の取っ手を外して対策をとっています。

トイレ事情もひどく、兄は自分で排泄や清掃ができません。便座に便が付いたまま放置されることもあります。トイレットペーパーのホルダーはとうの昔に壊されてしまい、備え付けの棚から取り出して手でからからと巻くスタイルを余儀なくされています。漏らしてしまうこともしょっちゅうです。兄が使う寝室はおもらしで床が腐り、常にアンモニア臭がします。トイレも自分で流せないので、我々が気が付かず放置されると、家とは思えないほど悪臭が広がります。自分の家のトイレに対して「今日は綺麗だろう」か、なんて普通は思いませんよね。私は毎日思います。

食事も一緒にとれません。兄は食事中に咳やくしゃみをして食事を台無しにしたり、目の前に現れて食べ物をひっくり返したりします。テーブルは1歳児が食べ終えたあとのようにぐちゃぐちゃです。時間をずらして食べても、目の前に現れたら食べ物をひっくり返されてしまいます。よく早食いだと指摘されるのですが、理由が明白すぎて苦笑いしかできません。

衣類もここ数年は別々に洗濯をして自分の部屋で干すようにしています。紙や布も大好きな兄は、薄手の洋服が目に入ると破きます。夏物のカーディガンと、ヒートテックをびりびりにされてからは鍵のかかる自分の部屋に干しています。自分の部屋に鍵をかけていてもしょっちゅうドアノブを力強くガチャガチャとやられます。昼寝中にやられた時は心臓が口から飛び出るんじゃないかと思うくらいびっくりしました。なので、自分の部屋でも気を抜いていられません。先日、ちょっとリビングに用があって出た数分の間に侵入され、綿棒の入れ物をとられました。中身の綿棒は床に散らばっていました。

中でも特に耐え難いのは自傷行為です。兄は頭を床や壁に打ち付けることがあり、その音は家中に響き渡ります。おかげで我が家の壁は穴だらけ、玄関の網入りガラスは自傷によってヒビが入っています。業者が家に立ち入ったときに「どうしたんですかこれ!」なんてちょっと引き気味に玄関を指差したときには頭を抱えたくなりました。

母と兄の怒鳴り合いが続き、兄が寝ている時以外は騒音が止まらない日々——正直、精神が持たないと感じることもあります。最近は本当にこの自傷行為が酷く、二階で大きな音を立て、それに対し母が怒鳴るの繰り返しです。兄が寝ている時間以外、これがずっと続きます。頭がおかしくなりそうになりますよね。

あまり触れたくはありませんが、性的な行動も問題です。兄は場を選ばず自分の性器を触り、場所をわきまえず脱いでしまうことがあります。家族や訪問者がいる前でも平気で露出してしまいます。昔、友達と一緒にいる目の前でパンツを脱がれたことがありました。本当に恥ずかしかったし、友達に申し訳なかったのをよく覚えています。

これが私の日常であり、当たり前の生活です。生まれてから今日に至るまでこの日常が覆ったことはありません。両親は兄を産むまで障害者のいない生活をしていたのに、私の日常はずっと、ずっとこれです。早く解放されたい――それが私の切実な願いです。

そんな中でも、小さな光がありました。最近、私の誕生日に兄のショートステイが決まり、兄がいない時間を過ごせたことはこの上ないプレゼントでした。私はここに書いたことを家族以外と共有したことはありません。親しい友達にも話したことがありません。これを読んでいるあなたがどんな立場の方なのかは存じませんが、私の日常がどうかあなたの役に立ちますように。

世の中に伝えたいこと

私は家族で外出も外食も旅行も、兄も私も小さかった頃に片手で数える程度にしかしたことがないです。家族との思い出なんて全然ないし、あっても幼すぎて覚えていません。

もしあなたが家族との関係がそれなりに良好であるなら、ぜひたくさん出かけて思い出作ってください。そうでないなら、クソ喰らえ!って思いながら私と一緒に生きましょう。絶対幸せになってやろうよ。

てんぷら さんのくらし