動態デザイン研究室要望書案

特別児童手当等の

所得制限撤廃に向けた

要望書

(案)

趣旨


本要望書は、障害児・障害者とその家族を支える制度の原点を再確認し、

  1. 障害福祉の国民理解促進

  2. 特別児童扶養手当等の所得制限撤廃と障害福祉サービス負担額見直しによるレスパイト機会の増進

  3. 短時間正社員制度の活用および障害者扶養共済の推進による経済対策

の三本柱を軸に、障害福祉と経済対策を両立させる政策の実現を強く要望するものである。

  1. 制度成立の理念と歴史的経緯


昭和39年(1964年)、第三次池田勇人内閣のもとで「重度精神薄弱児扶養手当法」が成立した。当時の小林武治厚生大臣は国会答弁で、この制度を自ら「お粗末な法律」と表現した。その言葉は自らの制度を卑下したものではなく、「制度は小さいが、これをもって終わりとせず、後世が必ず拡充していくべきだ」という決意の裏返しであり、そのように答弁している。すなわち、この法律は障害児とその家族を支える国家的責任を初めて法として形にし、後世に託す「小さくとも確かな第一歩」であった。

 

制度はその後も理念を継承し、改正を重ねて次のように発展してきた。

 

  • 1966年改正:法名称を「特別児童扶養手当法」と改め、対象を重度身体障害児へ拡大。同時に「この手当は所得保障ではなく、介護家族への特別な手当である」と制度の性格が明確にされた。

  • 1974年改正:成人対象の「特別福祉手当」を新設し、現行の名称「特別児童扶養手当等の支給に関する法律」へ改めた。

  • 1975年改正:中程度障害児を対象に含め、1級・2級区分を導入した。

  • 1986年改正:福祉手当制度を再編し、障害児福祉手当・特別障害者手当を創設。物価対応による月額引き上げも実施。

  • 2000年代以降:内部障害・難病を含む基準整備、国際基準との整合化(2014年視覚障害、2015年聴覚・腎機能障害など)。

 

このように制度は拡充してきたが、なお当初の理念に照らして不十分な部分は残されている。

  1. 当初の理念と現状の比較

制度は半世紀以上にわたり改正を重ね、発展してきた。しかし本当に重要なのは、「制度が設立当初に何を目指していたのか」と「現在どこまで実現できているのか」を照らし合わせることである。ここでは、小林厚生大臣の答弁に示された原点の理念と、現状の制度の到達度を比較し、残された課題を明確にする。

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表の整理から、制度創設時の理念のうち「独立法による国家責任の明示」「対象拡大」についてはおおむね達成されたことがわかる。しかし一方で、次の点がなお不十分である。

 

  • 介護家族への特別手当という理念に照らして、いまだ残存している所得制限

  • 親亡き後の不安に対応する資産形成の推進

 

そして、もう一点忘れてはならないのが国民理解の促進である。当初の小林武治厚生大臣らの答弁は、障害者介護の実態調査に基づき、その切実な状況を背景に形成されたものであった。すなわち、この「理解」こそが制度を取り巻くあらゆる施策の効果を最大化するために不可欠な要素である。

 

以上三点、すなわち 所得制限の撤廃・親亡き後の備え・国民理解の促進 こそが、当初の理念に立ち返ったときに解消すべき未達成領域であり、次にこの具体的施策を提案する。

  1. 要望事項


当初の理念と現状を比較した結果、理念が十分に実現された部分もある一方で、不十分な部分や新たに顕在化した課題も浮き彫りとなった。これらを踏まえ、今日的に必要な具体施策として以下三項目五点を提案する。

 

A. 障害福祉に関する国民理解の促進

1) 教育への障害福祉学習の導入

初等・中等教育において、障害福祉制度の意義、障害児・者とその家族の生活実態、制度成立の歴史を学ぶ単元を設け、子どもの頃から共生社会の価値観を育む。

 

2) 包括的な情報基盤の整備

厚生労働省が主導し、制度・申請手続・サービス内容を統合したポータルサイトを構築することで、やさしい言葉と多様な媒体(動画・SNS 等)を活用して周知を進め、誰もが「必要なときに必要な情報にたどり着ける」環境を整える。

 

B. 障害福祉制度の根本的進展によるレスパイト機会の増進

3) 所得制限の撤廃および障害福祉サービス負担上限額の引き下げ

先に紹介した制度の主旨に鑑み、特別児童扶養手当等に残る所得制限を撤廃(「特別児童扶養手当等の支給に関する法律」第6, 7, 8, 21条並びに同法施行令第2条を削除)する。また、サービス負担上限額(「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行令」第17条第1号)を見直すことで複数サービスを選択可能とし、レスパイト機会を増進させ、家族の安心を支えると同時に、就労促進・消費拡大を通じた経済効果を見込む。

C. 短時間正社員制度の活用および障害者扶養共済の推進による経済対策

4) 短時間正社員制度の活用による雇用機会の推進

障害福祉分野の人材不足と障害者家族の雇用機会創出に対応するため、障害者手帳保持者の家族が障害福祉サービスに従事する場合、短時間正社員制度を活用して雇用した事業者に対し助成金を支給する制度を設立し、就労促進を通じた経済効果を見込む。

5) 手当を活用した障害者扶養共済の推進

扶養者死亡後に備えた貯蓄問題に対する積極的な取り組みを推進するため、受給者が特別児童扶養手当等のうち1口分を障害者扶養共済に拠出すると申告した場合、国が同額を上乗せして拠出し、加入2口分相当とする制度を新たに創設する。これにより家族の安心を支えると同時に、投資信託への拠出金を増加させることによる経済対策効果を促す。

  1. 要望実現に向けた諸情報


本要望に関する関連情報を下記に整理した。試算および補足的な分析結果については、別添資料を参照されたい。

A) 我が国の障害者数推移

厚生労働省が実施する「生活のしづらさなどに関する調査」に基づき、同省が推計した障害者数の推移は以下の通りである。2022年時点における障害者数は推計1,164.7万人に達し、日本人人口の約9.5%を占めている。このことから、障害福祉に関する諸課題は、もはや一部の人々に限定された問題ではなく、社会全体で共有すべき課題であることが明らかである。

また、障害者全体に占める65歳以上の割合は2006年から2022年にかけて約15ポイント減少(62%→47%)しており、近年では小児から現役世代にかけての障害者数が増加傾向にある。

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B) 障害福祉にかかる費用の動向

障害福祉関連の支出は、主として厚生労働省の「障害保健福祉費」に集約されている。ただし、2023年度より障害児福祉についてはこども家庭庁へ移管されている。これらを集計すると、2023年度には約2.48兆円が障害福祉関連経費として計上されており、この金額は過去十数年でおよそ2倍に拡大していることが分かる。

次に、この2.48兆円の内訳を確認する。決算書データベースの項目は細分化されているが、金額規模の大きい主要項目を抽出すると、特に増加が顕著なのは「障害者自立支援給付費負担金」「障害児入所給付費等負担金」である。これらはいずれも年々増加傾向にあり、2025年度(令和7年度)の概算要求においては、「障害者自立支援給付費負担金:1兆6,497億円」「障害児入所給付費等負担金:4,925億円」と見込まれている。

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C) 特別児童扶養手当等の費用推移

続いて特別児童扶養手当等の費用推移を確認する。特別児童扶養手当等は、「特別児童扶養手当等の支給に関する法律」に基づき、「特別児童扶養手当」「障害児福祉手当」「特別障害者手当」「経過的福祉手当」の4種類の手当で構成されている。一方、法体系上は、特別児童扶養手当と、福祉手当を起源とするその他3手当に大別されており、予算上の分類もこの区分に沿っている。

これらの手当に関する予算の推移をみると、全体として年々増加傾向にある。2023年度においては「特別児童扶養手当:1,435.3億円」「その他3手当(障害児福祉手当・特別障害者手当・経過的福祉手当):425.4億円」が計上されている。

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D) 特別児童手当等の所得制限による逸失受給者および潜在受給者の推定値

続いて、特別児童扶養手当等における所得制限により受給機会を逸している人数の試算を示す。詳細は別添資料を参照されたいが、まず基礎データとして「申請を行ったものの、所得制限により受給できなかった者」に関する統計が福祉行政報告例に存在している。この統計によれば、2023年度末時点で4手当合計約3.7万人が所得超過により支給停止となっている。しかし、実際にはこのほかに「所得制限に該当するため、そもそも申請を行っていない層」も一定数存在すると考えられる。これらの未申請層を推定により補正した結果、約8.16万人が所得制限により受給機会を逸していると推計される。この人数は、実際に受給している者数に対して約17%に相当する。

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E) 特別児童扶養手当等の所得制限を撤廃した場合における追加費用の試算

所得制限を撤廃した場合に必要となる追加費用は合計約395.6億円と見込まれる。このうち、障害児福祉手当・特別障害者手当・経過的福祉手当については、国3/4、地方1/4の負担構造となっているため、これらを按分して算出すると「国の負担増:約376.0億円」「地方全体の負担増:約19.5億円」となる。この水準は、障害福祉関連予算(約2.48兆円、2023年度)全体からみれば約1.6%に相当し、制度的影響は限定的である一方、受給機会の公平性を大きく改善する可能性がある。

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F) 財源に対する検討

次に、所得制限撤廃に伴う追加費用(約395.6億円)に対する財源の検討を行う。2023年度の決算状況を見ると、障害保健福祉費単体では財源の不足が生じる可能性があるものの、一方で介護保険制度運営推進費においては、毎年度3,000億円以上の不用額が発生している。

したがって、これら不用額を省内で総合的に調整・再配分することにより、必要な財源を確保することが可能であると考えられる。具体的には、厚生労働本省の「072 障害保健福祉費用」および「082 介護保険制度運営推進費」の不用額を基礎データとして、全体調整の枠内で約400億円規模の財源を捻出することを想定する。

この方法により、制度改正に伴う新たな国費の増額措置を最小限に抑えつつ、所得制限撤廃による公平性の改善を実現することが可能である。

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G) 国会答弁に関する資料

以下に、「1」で述べた特別児童扶養手当の創設時における、小林武治厚生大臣および当時の厚生省職員による答弁の一部を抜粋する。

1) 法案要旨説明

第46回国会衆議院 / 社会労働委員会第39号 / 昭和39年5月7日
議案説明小林国務大臣

ただいま議題となりました重度精神薄弱児扶養手当法案について、その提案の理由並びにその要旨を御説明申し上げます。

政府は、かねてより母性保健対策を講ずることにより精神薄弱児の出生を防止するとともに、不幸にして精神薄弱の状態にある児童につきましては、児童福祉法に基づく児童福祉施策の一環として、児童相談所による相談指導、在宅指導の助成等を行なうほか、精神薄弱児施設または里親制度を活用しての援護の措置を講ずることによって、その福祉の増進をはかってまいったところであります。しかし、これらの諸施策は、かかる児童の将来の自立のための保護、特にその生活及び職業の指導に力点が置かれていたのであります。

今後、精神薄弱児の福祉を増進するためには、これらの児童が家庭にあって介護されている場合には、在宅指導を強化するとともに、特に重度の精神薄弱児の父母その他の養育者には、国の責任において特別の手当を支給することにより、その福祉の増進をはかる必要があると考えられます。かような家庭にある重度精神薄弱児について、国が一定の手当を支給する制度を設け、精神薄弱児対策に一歩前進をはかりたいと存じ、この法律案を提出した次第であります。次に、重度精神薄弱児扶養手当法案の内容について、その概略を御説明申し上げます。

第一に、支給対象者の範囲でありますが、この手当は、日常生活において常時の介護を必要とする程度の精神薄弱の状態にある二十歳未満の児童を監護する父母またはその児童を養育する父母以外の者に支給することといたしております。ただし、その者が公的年金給付を受けることができる場合、または一定額以上の所得がある場合などにおいては支給しないことといたしております。

第二に、重度精神薄弱児扶養手当の額は、一月につき、監護しまたは養育する重度精神薄弱児一人当たり千円といたしております。

第三に、重度精神薄弱児扶養手当に関する費用は、給付費及び事務費とも全額国庫で負担することといたしております。

第四に、この法律の施行期日でありますが、昭和三十九年九月一日から施行いたすこととしております。

以上が重度精神薄弱児扶養手当法案の提案理由及び要旨でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。

出典:国会会議録 ↗

2) 法案への所感に対する答弁

第46回国会衆議院 / 社会労働委員会第47号 / 昭和39年5月27日
答弁小林国務大臣

私は、先ほど冒頭にお話しのあったことについて一応申し上げて、私どもの考えを申し上げておきますが、この問題が単なる思いつきだとかいうようなことを言われておりますが、実は正直に申して、あの拝啓何々から問題が発したと私は考えておりません。私どもは、前々からも、こういうものはぜひやらなければならぬということを信念的に考えておったのです。たまたまタイミングがそれに合ったということでありまして、世間の関心を集めたのはあれが大きかったとは思いまするが、政府がこれを発意してこういう対策をしようということは、あれにもとを発したのじゃない、前々からこういうことの必要は痛感しておったのでございます。ことに私は、先年来、手をつなぐ親の会等の会合に出まして、これらの問題がいかに家族にとって悲惨なことであり、また社会に対するこれらの人の活動を妨げておるか、こういうことを強く考えておったわけでございます。また、この手当がわずかであって粗末である、こういうことを申されますが、それじゃいままで何をされておったか。出発するときはすぐに悪口を言う、これだけのものでは何にもならぬ。それじゃいままで何をしておったかといえば、何にもしておらぬ。これだけでも私は大きな政府の施策である、かように確信をしております。

また、こういうことは初めてのことでありまして、この法律なりこの予算なりを通すにつきまして、政府部内においても、またわが自民党の中においても、どれだけの困難な論議がかわされたかということも私は申し上げておかなければなりません。ことに大蔵省方面においては、このことは将来に非常に大きな尾を引くのだ、こういうことでこれに対して非常な賛成についてのちゅうちょをされたのでございまして、そういう意味では実は児童扶養手当の法の中に入れていいんじゃないかという議論がありますが、私は将来を考えて、あえてこの独立の法を選んだ。

すなわち私は、重度の精神薄弱児だけを相手にして、対象にして考えたのではありません。これらの成年についてもぜひこの問題の中に包含させたい。すなわち二十歳以上の精薄者については、いまだに福祉年金の支給がない。これらを私は一緒に包含をしたい。また現に、御承知のように、二十歳未満の重度身体障害者については、これはいま何も手当てをしておりません。年金もくれておらぬ。それで私は、たとえこの法律が通っても、今後の問題として成年に達した精薄者の問題が残っておる、また二十歳未満の身体障害児の問題が残っておる、これらも私はどうしても解決をしなければならぬ、こういう責任を感じておりまして、その暁においては、私は、重度精神薄弱児でなくて、重度心身障害者に対するかような制度に補完をさせたい、こういうふうな考え方を持っておるために、いろいろ議論があったが、あえて独立の法律を選んだ。

すなわち出発は小さいが、将来の成長と申しますか、こういうことに非常に大きな期待を持っておるためにかような形を選んだということも、ぜひひとつ御了解を得ておきたいのでございます。

それにつきましてただいまのお尋ねでありますが、とにかくお話しのようなことはたいへん必要なことでありますが、このことは、いわゆる先進国のアメリカにおいてもいまさらこういうことを持ち出して騒いでおるような始末でありまして、どこの国においても同じ悩みを持っておるのでありまして、私ども、いまのこの問題の予防ということは非常に大事なことであるが、まだ研究が非常におくれておる、いまだに日本では、妊産婦の健康管理あるいは出産の場合のいろいろな注意、こういうようなことにとどまっておるのでありまして、まだこれを科学的にほんとうに検討するということは将来の問題に属するので、これは日本ばかりではないと思うのであります。しかし、とにかく出ておる数十万人の者に対する対策は緊急を要する、こういうことでかようなお願いをしておるのであります。

多少冗長にわたって恐縮に存じますが、こういう法律を単独に選んだということにつきましての事情もひとつ御説明を申し上げて、御了解を得ておきたいと存じます。

出典:国会会議録 ↗
答弁小林国務大臣

これはお話のとおり一番おくれている部面で、精薄関係については政治があまり及んでおらぬ、こういうことがはっきり言えるのでありまして、現に収容数等も必要な数の四分の一か五分の一しかないというようなことでありまして、施設そのもについても非常に不十分で、これを施設に引き取りさえすれば一家が救われる、また一家が社会復帰が十分できるということでありまして、施設問題につきましても非常におくれているのを取り戻し、基礎研究をしなければならぬのはお話のとおりでありまして、現にやっと東京小児療育病院でございますか、あそこの脳性麻痺研究所も本格的に私どもも補助いたしたいと思っておりますし、国立秩父学園においてもこれらの研究をようやく始め、精神衛生研究所におきましても同様でございますが、特におくれている分野であるからして、それだけに力を入れてこのおくれを取り戻す努力をいたさなければならぬということでございます。お粗末な法律でありますが、やっとこれでその方面の第一歩を踏み出す、こういうことで、これからこれを拡充しなければならぬということは私ども強く考えておりますので、ぜひひとつ御協力を願いたいと思っております。

出典:国会会議録 ↗

3) 所得制限に対する答弁

第46回国会衆議院 / 社会労働委員会第47号 / 昭和39年5月27日
答弁黒木政府委員

実は先ほど大臣も申されましたように、この給付額なり給付の条件等は非常に制限的でございまして、児童扶養手当の給付額が第一子が千円であるものでありますから、結局それに右へならえさせられてしまったのであります。

それから所得制限等につきましても、結局児童扶養手当と同じようなことになってしまったわけでありますが、これは御意見のように非常に不満とするところでありまして、何とか今後改善してまいりたいと思います。ただ、私たち児童局が引き受けましていろいろがんばりました結果、この併給の関係で突破口をちょっと認めてもらいましたのは、実は母子福祉年金で、満十五歳になりますと精薄児の子供を、たとえば長男が精薄児で、二男が正常児であった場合に、年齢延長が精薄児にはございませんから、母子福祉年金の併給ができないことになってしまうのでありますが、これをただし書きで救済をいたしまして、満十六歳以上になりましても満二十歳までの間はこの手当が支給できるというようなことを、ただし書きで追加をしたのでありますが、そういうことで、徐々にではありますが、この併給の問題は改善をしてまいりたいと思っております。

出典:国会会議録 ↗
第46回国会衆議院 / 社会労働委員会第50号 / 昭和39年6月3日
答弁小林国務大臣

いや、あるなしではない、そういう事実を申し上げているのです。そういうことで、最後まで大蔵省はこれを承認しない。最後の段階でようやく私と大蔵大臣の折衝で、とにかく針のめどの小さいところを通るためには、やむを得ず何かの点で、妥協と申しますか、話をつけなければならぬ、こういうことで、お話のように二十歳以上の精神薄弱者は除かれている。これは私は政治の面の非常に大きな欠陥だと思っております。しばしばこの席で申し上げておりまして、これは直さなければならぬ。いずれかに、とにかく入れなければならぬ、こういうことを厚生当局は強く考えておるのでありまして、お話のとおり、これはもう私どもとしても、このままでは絶対に推移せしめることはできない、こういうふうな考え方をいたしております。

出典:国会会議録 ↗

4) 手当の性格に対する答弁

第51回国会 衆議院 社会労働委員会 第31号 昭和41年5月7日

答弁竹下政府委員

重度精神薄弱児扶養手当につきましては、こういう障害の重い子供さんを持っておる扶養者につきまして手当を出すということでございまして、そういう面からいたしますと、現実には、そのために非常に金を使っておるという面も多々あろうかと思うわけでございます。ただ、本来の扶養手当の性格につきましては、成立の当初から問題がございまして、所得保障であるのかあるいは特別の介護費であるのか、こういう点が議論になったわけでございます。そういう面、私どものほうでもいろいろ検討した結果といたしまして、やはりこれは特別介護という面を主として考えるべきではないか、所得保障というよりも介護費という面で考えるべきではないか、こういう性格づけをいたしたわけでございます。そういう点からいたしますと、精神薄弱児のみならず、重度の身体障害児にも及ぼすべきである、また、所得制限の大幅な緩和、あるいは公的年金をもらっておりましてもこれをあわせて支給する、こういうふうにやっていくべきではないかということで、手当の額ももちろん大事でございますけれども、性格を明らかにするという面で範囲の拡大ということを今年度は実現したわけでございまして、今後につきましては、所得制限の緩和あるいは公的年金の併給ということでこの手当の性格を明らかにしていきたい、かように考えておる次第でございます。

出典:国会会議録 ↗
  1. 結び


約半世紀前、小林武治厚生大臣は「お粗末な法律」と自ら厳しく評しつつも、その言葉の奥底には「これを出発点とし、後世に必ず託していく」という熱い決意が込められていた。そして私たちは、その志を確かに受け継いできた。制度は歩みを重ね、今日も多くの家族を支えている。ただし不足もあり、特に所得制限においては、共助が重要とされる障害福祉において分断を誘引している部分でもある。したがって、特に所得制限にあっては制度をさらに進展させるにあたり、最重要課題とも言える。

近年、日本の障害者数は増加の一途を辿っており、厚生労働省の2022年試算によれば、その数は1,164.6万人に達し、日本国民のおよそ10人に1人が障害者となっている。これは医療技術の発達によって救える命が増えたことが大きく寄与していると考えられる。そのような状況下にあって、障害福祉の進展は利用者と家族の安心を支えるだけでなく、国民理解の深化を通じて社会の包容力を高め、さらに経済の活性化においても重要な役割を担うものである。小林大臣が火を灯し、先人たちが守り育ててきたこの制度を、私たちはさらに力強く未来へと押し広げていく──その決意を胸に、世界で最も障害福祉に対し理解が深く、一方でこれらを経済対策へと活かす「世界に名だたる模範的福祉経済両立国家」を目指し、ここに強く要望する。

PDF文書

(内容は一緒です)